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複数の遺言書が出てきたら?

2012.01.15

今回のテーマは、複数の遺言書が出てきた場合の取り扱いについてです。

ある男性(80歳)が平成23年12月30日に亡くなり、2つの遺言書が出てきました。

公正証書遺言

(平成20年4月1日作成)

内容:財産は全て長男に相続させる。

 

自筆証書遺言

(平成21年4月1日作成)

内容:自宅は次男に相続させる。

 

この2つの遺言書が出てきた場合、財産はどのように相続されるのでしょうか?

(遺言書は法的に効力のあるものとします)

皆さんも一緒に考えてみてください。

 

公正証書遺言は、自筆証書遺言よりも効力が強いので、遺言書が全て有効になり、財産は全て長男に相続される。

 

公正証書で書いた遺言を修正するには、公正証書遺言を作成しなければならないので、自筆証書遺言での修正は無効であり、財産は全て長男に相続される。

 

遺言書の内容は、遺言書の内容と抵触する部分のみが修正された事になり、自宅は次男が、その他の財産は長男が相続する。

 

いかがでしょうか?どれも一理ありそうな選択肢ですが、正解は 『ウ』  です。

 

ア(×) 公正証書遺言には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言など数種類ありますが、どの遺言書でも効力に差はありませんので、誤りです。

 

イ(×) 公証役場に行って、公証人に作成してもらう公正証書遺言。

これを修正するには、やはりもう一度公証役場に行って、公正証書遺言で修正をしなければならないような気もしますが、そうではありません。

修正をする遺言書の書式は問われませんので、公正証書遺言で書いた内容を、自筆証書遺言で修正する事も可能です。したがって、この選択肢も誤りです。

 

ウ(○) 民法では、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺 言を撤回したものとみなす(1023条)と定められています。

の遺言では、『財産はすべて長男が相続する』となっていますので、自宅は長男が相続する事になりますが、遺言書では、『自宅は次男に相続させる』となっていますので、次男が相続する事になります。

つまり、『自宅を誰が相続するか』という部分についてのみ、?の遺言書と?の遺言書の内容が抵触しています。したがって、『自宅を誰が相続するか』という部分についてのみ、遺言で遺言を撤回したものとみなされるのです。

 

したがって、今回のケースでは、どちらの遺言書も有効となります。そして、遺言書により自宅は次男に、遺言書によりその他の財産は長男に相続される事になります。ちょっとややこしいですね。

 

特に今回の場合、遺言書が自筆証書遺言なので、もらえる財産が減ってしまう長男からすると、『公正証書遺言の内容を知った次男が父親の手をとり、無理やり書かせたのではないか・・・』という疑心暗鬼にかかってしまう可能性もあります。

 

遺言書を修正する際には、前の遺言書は破棄して新しく作成しなおすというのが、相続人にも遺言者にも、そして相続発生後に手続きを行う際の第三者機関(銀行や登記所など)にも分かりやすくお勧めです。

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筆者紹介

江頭 寛
福岡相続サポートセンター
代表取締役社長

生前対策から相続発生後の申告・納税に至るまで、皆様から寄せられる無料相談への対応や、希望する幸せな相続の実現に向けての対策立案と実行支援を、弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士等の先生方をコーディネートしながら日々やらせて頂いてます。お客様にとってベストな相続並びに資産の有効活用を徹底的にサポートすることが私の最大の使命です。また、相続対策セミナーも全国各地で積極的に開催中。まずはお気軽にご相談ください。

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